洋裁をしていると、「アイロンが大事」という言葉を何度も聞きます。
たしかに大事。ものすごく大事。
でも正直なところ、どこかでこう思ったことはありませんか。
「はいはい、またそれね」
温度がどうとか、蒸気がどうとか、当て方がどうとか。
言われるたびに「わかってるつもり」にはなるけれど、
じゃあ実際にうまくいっているかというと、なんだか違う。
なんとなくやり過ごす・・・
そんな感じのまま、長いこと過ごしてきた人も多いと思います。

自分のこと
実は私自身、アイロンにはかなりの時間を使ってきました。
というか、だいぶ遠回りしてきました。
いろんなアイロンを試して、
当て布を替えて、
蒸気を出したり止めたり。
しまいには、
「これやったらどうなるんだろう」と思って、
わざと表からゴシゴシかけて、
テカらせてみたこともあります。
今思えば、なかなか乱暴です。
完全に布を実験台にしていました。
でも当時は必死でした。
ちゃんとできる人になりたかったし、
「正解」を知りたかった。
言われたことは一通りやってみたし、
自分なりにもいろいろ試しました。
うまくいったこともあるし、
失敗してがっかりしたことも山ほどあります。

回り道しながら
そんなふうに試行錯誤を重ねる中で、
だんだん気づいてきたことがあります。
アイロンって、
がんばればいいってもんじゃないな、ということ。
力をかければ言うことを聞くわけでもないし、
理屈を覚えたら急に上達するものでもない。
むしろ大事なのは、
「今、この布はどんな状態なんだろう?」と立ち止まること。
張っているのか、ゆるんでいるのか。
湿っているのか、乾いているのか。
これ以上触られたくないのか、少し助けてほしいのか。
アイロンは、布を押さえつける道具というより、
布の様子を読み取るための道具なんじゃないか。
最近は、そう思うようになりました。

だ・か・ら
アイロンを「上手にかける技術」だとは考えなくなりました。
それよりも、
どう考えるか、どう見るか、の問題だと思っています。
温度や蒸気、圧といった言葉はよく知られていますが、
それを“どう理解するか”で、まったく別のものになります。
覚える前に、感じる。
手を出す前に、観察する。
その順番が、案外いちばん大事だったりします。
私はこれを、自分の中で
「アイロンの三原則」と呼んで整理しはじめました。
といっても、立派な理論というより、
長年の遠回りから拾い集めた考えのメモのようなものです。

noteー研究ノート
最近は、こうした
「技術の前にある考え方」
「無意識にやってきた判断」を、
少しずつ言葉に残しておきたいと思うようになりました。
完成された教科書というより、
自分自身の思考の記録に近いものです。
noteでは、それを
「洋裁研究ノート」としてまとめ始めています。
感覚とか、勘とか、経験とか、
これまで言葉にされにくかった部分を、
できるだけ正直に書いています。
もし、
アイロンが苦手だな、と感じている方や、
言われた通りやっているのにうまくいかない、と思っている方がいたら。
もしかしたら、技術の前に「考え方」のところで
引っかかっているのかもしれません。
そんな視点のヒントとして、
そっと覗いてもらえたらうれしいです。

おまけ
ちなみに、アイロンって「これじゃなきゃダメ」というものは、案外ない気がしています。
もちろん、好みはあります。
これは使いやすいな、と思うものもいくつかあります。
でも、どんなアイロンでも、ちゃんと付き合えば、ちゃんと仕事をしてくれる。
そう感じることのほうが多いです。
結局のところ、道具そのものよりも、
それとどう向き合うか。
どう見て、どう触ろうとしているか。
その姿勢のほうが、ずっと大事なのかもしれません。
ま、私は今のところ一押しはコレ⇩
なんだかんだ文句言いながらも使い続けています(笑´∀`)
今年も残り少なくなり、急に寒さが身に染みる気候となってきましたね。
暖かくしてゆっくり過ごしましょう。
ではまた♪




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